心臓リハビリテーション部門
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2020.11.1
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食欲の秋にスポーツの秋
寒さ深まるこの時期、冬に備えて免疫をつけるのは今です

11月に入り寒暖差を感じるようになりました。体が寒さにまだ慣れていないこの時期は、体調を崩しやすく風邪もひきやすくなります。冬に向けてインフルエンザなども流行る前に予防が大切!しっかり免疫力をつけましょう。

♥ 免疫力をつけるには

次の3つが大切です。

  1. 適度に動いてしっかり休養をとる。
  2. 栄養を十分に摂って体を温める。
  3. ストレスを減らして構内環境を整える。

人間の免疫能は日周性リズムと共に、日中に高まって夕方から夜にかけて徐々に低下していきます。日が昇る朝にきちんと起床し3度の食事を欠かさず摂り、しっかり身体を動かして睡眠を十分にとる。この当たり前の“規則正しい生活”こそが免疫力をUPするコツです。

では具体的に1つ1つ解説していきましょう。

1. 休養

人間は睡眠時に副交感神経が優位に働き、体をリセットするメカニズムを兼ね備えています。また軽い運動などでも良いので、適度に体を動かすことで睡眠の質も上がります。この質の良い睡眠こそが、免疫細胞であるリンパ球の増加や成長ホルモンの促進など疲労回復の他、自律神経を整え体の軌道修正をしてくれるのです。

睡眠についての詳細は「心リハNOW vol.52」をご覧ください。

2. 栄養

図1をご覧ください。皆さん「手ばかり栄養法」1)をご存じでしょうか?これは自分の手を“食べるものさし”として、手のひらに乗る分の食材をバランスよく食べれば1日の摂取目安量になるというものです。

図1

そもそも免疫力を高めるということは、免疫細胞を増やすということです。そのためにはたんぱく質の摂取が欠かせません。たんぱく質は筋肉などの体の組織をつくるだけでなく、免疫細胞である白血球を構成する主成分でもあります。また、たんぱく質は内臓を温め体温を保持する働きもあります。人間は体温が1℃下がると免疫機能が30%低下するといわれているので、積極的なたんぱく質摂取が必要です。

特に肉、魚、卵、乳製品、大豆製品に含まれているアミノ酸スコアの高い良質なたんぱく質摂取がオススメです。手ばかり栄養法では、これらのたんぱく質の摂取目安量を、「しっかり食べる」と示しています(図1)

その他、抗酸化成分を含むビタミン類を摂ることも大切です。特にビタミンA、C、Eの摂取は活性酸素を抑え抗酸化作用があり、粘膜を丈夫にして免疫細胞を活性化する効果があります。たんぱく質同様、手ばかり栄養法では、これらのビタミンを多く含む野菜類の摂取目安量を、「たっぷり食べる」と示しています(図1)

挿絵

3. 腸内環境 2)

免疫細胞の60~70%は腸内に存在しているといわれるほど、腸内環境を整えることが免疫力をUPさせるカギとなります。腸内には大きく善玉菌、悪玉菌、日和見菌という菌があり、それぞれ15%、10%、75%の割合で存在しています。そして日和見菌は優勢の方に加勢する性質があるので、健康的な腸内では日和見菌はおとなしく、何の影響もありませんが、少しでも腸内のバランスが悪い方へ崩れると、日和見菌も悪玉菌と同様、有害な作用を及ぼします。

そうならないよう、整腸を促すためには善玉菌を増やす手助けとなる発酵食品を積極的に摂りましょう。さらに、善玉菌のエサとなるオリゴ糖を摂ることで善玉菌が増え、腸蠕動を促し排便を促す食物繊維を摂ることで善玉菌が住みやすい環境になります。こうして善玉菌を優位に導くことで、腸内はいつもピカピカ、免疫力もUPしていくのです。

挿絵

もっと知りたい方へ

自律神経の乱れが免疫力を低下させる

自律神経は脳から始まる体のネットワークで、全身の細胞をコントロールして協働するよう指示を出す司令塔です。自律神経は交感神経と副交感神経によって構成されており、それぞれ正反対の働きをし、日常生活でそれぞれの役割を担いながらバランスをとっています。

1日の日周性リズムでみると、朝目覚めてからの日中は交感神経が優位に働き、アドレナリンを分泌させます。そして心身ともに活動するための状態へと作っていきます。緊張しているときやストレスを感じているときも交感神経が関係しています。

一方、副交感神経は体をリラックスさせる作用を持ち、食事中や睡眠時に優位に働いています。癒しの時間や趣味などで、気分転換している時がそうです。

毎日忙しく仕事に追われ、睡眠時間や休息する時間が少ない人は、交感神経が常に優位に働いているので血管が収縮して血流が悪化し、老廃物もたまりやすくなります。そして免疫力も低下します。かといって副交感神経が優位に立ちすぎる楽な生活を続けてしまうことも新陳代謝の低下につながりトラブルの原因になります。

やはり適度に体を動かしながらメリハリのある規則正しい生活が重要だということです。そしてキーワードは30分!いつもより30分早く帰宅してリラックスしながら食事をし、ゆっくりお風呂に入って早めに就寝する。といった適度なゆとりがある生活を心がけてみましょう。“いつもより30分”無理のない実践が自律神経を整え、免疫力を継続していけるコツです。

参考文献:

  1. ヘルプランニング・あいち「手ばかり栄養法」
    https://www.foodmodel.com/category04/f_50.html
  2. 公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット」
    https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonaikankyo.html