MitraClip
MitraClip
経皮的僧帽弁接合不全修復システム
2018年6月 START / 名古屋地区初

 僧帽弁閉鎖不全症とは?

心臓は血液を全身に送るポンプの働きをしていますが、内部は4つの部屋に分かれています。各部屋を逆流しないよう、部屋と部屋の間には弁と呼ばれる扉がついており、心臓には4つの弁があります。このうち、肺で酸素を渡された血液が戻ってくる左心房と、全身に血液を送るポンプの役割をしている左心室との間にある弁を僧帽弁と呼びます。

僧帽弁閉鎖不全症の多くは、僧帽弁の“膜”を左心室側から引っ張っているひも(腱索)が伸びたり切れたり、あるいは僧帽弁のわくが拡大したりすることで、うまく弁が閉じずに合わさりが悪くなることで血液が左心室から左心房に逆流するようになるのが僧帽弁閉鎖不全症です。

正常(左)と正常でない(右)僧帽弁

症状

僧帽弁逆流が、軽度であれば無症状で経過しますが、中等度以上になると全身倦怠感、動悸、労作時呼吸困難などを生じ、さらに悪化した場合には心不全に至る可能性があります。

 経皮的僧帽弁クリップ術とは?

現在の僧帽弁閉鎖不全症治療の選択肢としては薬物治療と外科手術がありますが、薬物療法はあくまで対症療法であること、そして外科手術は左室機能低下、複数の併存疾患、ご高齢の患者さんにおいてはどうしても困難であると思われ、重症な僧帽弁閉鎖不全症の患者さんには有効な治療方法が他にありませんでした。

今回の治療方法が登場したことにより、外科手術を受けるにはリスクの高い患者さんに対しても治療の選択肢を増やすことができるようになりました。

 僧帽弁閉鎖不全症の治療方法

僧帽弁閉鎖不全症の治療方法

 患者さんのメリット

MitraClip/経皮的僧帽弁接合不全修復システムのメリット

従来の心臓手術(開心術)に比べ、体への負担が少ない

胸骨切開、心臓停止、大動脈切開、人工心肺、全身冷却といった特殊な操作がないため、手術後の痛みや心臓への負担、出血を少なくすることが期待できます。

入院期間の短縮

体への負担を少なくすることにより、早期の退院や日常生活への復帰が期待できます。

治療の選択肢が増えます

これまで年齢や体力、過去の心臓手術のご経験、臓器の障害(肝臓、心臓、呼吸)、または悪性腫瘍などが原因で、従来の心臓手術を受けられなかった方にも治療が受けられる可能性があります。

 MitraClip の適応

MitraClip は外科的弁置換術・形成術の危険性が高い、もしくは不可能と判断された場合、非常に高齢である、心臓手術の既往がある、心臓の動きが悪い、悪性腫瘍の合併がある、免疫不全の状態などが適応になります。

しかし、最終的には全身状態の評価とともに、心臓超音波画像等で僧帽弁の評価を行い、循環器内科医、心臓血管外科医などハートチームで議論し、MitraClip の適応と治療方針について決定します。

器質性 MR
機能性 MR
適応:手術ハイリスク 有症候性 3度以上の MR

MitraClip 治療の実際

 ハートチームからのメッセージ

当院は2015年に名古屋地区初のTAVI施設になって以降、様々な構造的心疾患に対するカテーテル治療を行っております。指導医2名を擁する体制で、地域医療機関の御協力もあり、東海地方ではトップレベルの成果を収めております。

今回、2018年4月より僧帽弁逆流症に対する治療として“MitraClip”が保険償還されました。同治療に関しても当院は名古屋地区で初めて導入される施設となり、安全に手技を施行しております。

これからも多くの施設と診療連携をして、皆様のご期待に応えられる体制を構築して参ります。

病院長 大川 育秀