CT(コンピュータ断層撮影装置)は、X線を利用して身体の内部の構造を撮影し画像化する検査です。さまざまな角度からX線を照射し、画像データを再構成します。体内の構造をあらゆる方向から立体的に描出できるのが、CT の強みです。心臓や血管の構造を視覚的に正確に把握することが可能です。現在存在する画像診断装置の中で、真に立体的な画像を構築できる装置はCTしかありません。
当院にある CT 装置は、Somatom Definition AS+®(Siemens社製)です。常に拍動している心臓の動きに追従し、最近のテクノロジーの進化と、当院の経験豊富なスタッフのスキルが合わさって、血管径数ミリの冠動脈の狭窄まで観察することが可能になりました。
ヨード造影剤はほとんどの患者様にとって安全に使用できますが、高度腎不全患者様は、腎機能障害を進行させる恐れがあります。
また CT 検査では一定のX線被ばくも生じます。特に心臓は動いているため、他の部位よりも被ばく量が増えることがあります。当院では、診断や治療においてメリットがデメリットを上回ると判断された場合に、検査を受けられることをお勧めしています。
なんといっても心臓CT検査のいちばんの強みは、からだの内部の構造を立体的に描出できること。あらゆる角度の断面を描出できるため、冠動脈疾患、大動脈疾患、末梢動脈疾患の診断や精密検査に活躍します。心臓や血管の断面や周囲の構造物も一緒に観察することができます。血管の壁に“プラーク”と呼ばれる動脈硬化性の変化が起こると、血管壁が血管の内側に張り出し、血液が流れる内腔が細くなります。血管壁の中にカルシウムの成分が増えると、その部分は白く光ったように写ります。径2-3㎜大の血管内のプラークの性状まで観察できます。
心血管CTは、病気の発見から治療前の精密検査、さらに術後のフォローアップまで幅広く活用されています。
心臓血管系の CT 検査には、基本的にはヨード造影剤が必要となります。
冠動脈の走行、狭窄を、腕の静脈から造影剤を注入することで、カテーテルという異物を体内に挿入することなく短時間で評価することが可能です。心臓カテーテル検査と比べよりからだへの負担が少ない(低侵襲)の検査です。
血管の壁に“プラーク”と呼ばれる動脈硬化性の変化が起こると、血管壁が血管の内側に張り出し、血液が流れる内腔が細くなります。径 2-3㎜ 大の血管内のプラークの性状まで観察できます。血管壁の性状を詳しく観察することにより、カテーテル手術の際にどんなディバイス(道具)を用いるかの戦略を練ることができます。
冠動脈ステント留置後(左)やバイパス術後(右)の経過観察にも有用です。
弁膜症の手術の前には弁の形状やサイズなどを正確に把握することが重要です。CT では弁の立体的な構造を描出し、3次元的に計測します。従来は心エコーにより観察・計測を行っていましたが、石灰化の強い弁や人工弁の観察は困難でした。CT を用いると、弁の形状や弁口面積だけでなく、その周囲の構造も詳細に観察でき、特に経皮的大動脈弁形成術(TAVI)などでは術前の精査に不可欠です。
心房細動のカテーテルアブレーション治療前には、心臓 CT により左房容積、肺静脈の解剖学的特徴、左房内血栓の有無の評価などを行います。併せて、冠動脈に病変がないかどうかのチェックも行います。
大動脈瘤、大動脈解離においては、壁の形状、瘤の大きさ、解離の程度や臓器への影響など、重症度を把握すること、また手術の際の術式を決定したり、術後の経過観察を行ったりするのに用います。末梢血管においても、血管の走行や狭窄を観察し、重症度や手術の是非の判断、術式を決定するのに役立ちます。
左から、正常大動脈、大動脈解離、(上)頸部および上腕の動脈、(下)腹部大動脈瘤、下肢動脈
CT検査を受けるときの注意点