心臓リハビリテーション部門
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2016.10.1
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若い世代の8割が運動不足!日本人の運動事情

■若い世代ほど低い運動習慣率

あなたは週にどれだけ運動していますか?

厚生労働省によれば、「運動習慣のある者」の年代別の割合は、図1(a, b)のようになっています。ここで、「運動習慣のある者」とは、「1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者」のことを指します」。

図1a1) 健康な日本人における、年代別・運動習慣を有する人の割合(男性)
図1b1) 健康な日本人における、年代別・運動習慣を有する人の割合(女性)

これをみると、男女ともに高齢になるほど習慣的に運動している人の割合が高いことが分かります。逆に、20代、30代の運動習慣は、男性は20%前後、女性は10%前後と、非常に低くなっています。もちろん、この統計は「元気に運動できる人」が対象であって、全高齢人口を繁栄しているわけではありません。とはいえ、元気な高齢者の半数近くが運動している、というのは頼もしい限りです。一方、就労世代については、仕事の中でたくさん活動している人もいるため一概には言えませんが、いわゆるホワイトカラーにおいては、おそらく運動不足の人も少なからずいるのではないでしょうか。若い世代が中高年になる頃には、日本はどうなってしまうのか・・・?少し怖い気がします。

■運動不足によって、毎年5万人が死亡している!

“THE LANCET”という、イギリスの一流の医学専門雑誌が、2011年に「なぜ日本は長寿国なのか」、というテーマで日本特集を組みました。その中で、「死亡にいたる因子」について取り上げています。図2をみると、1位はタバコ、2位は高血圧、そして3位が運動不足となっています。これほどまでに運動不足が我が国の健康寿命を損ねているとは、驚きですね。数十年後には運動不足が日本の死因第1位になっているかも・・・と想像すると、恐ろしいやら、ちょっぴり情けないやら・・・

  • 野菜・果物をほとんど食べない
  • 外食が多い
  • 食塩量が多い
  • スイーツを食べる回数が多い
  • 飲む機会が多い
  • ヘビースモーカー
  • 歩くのが面倒で、タクシー利用が多い
図22) 2007年の我が国における危険因子に関連する非感染性疾病と外因による死亡数

健康寿命を損ないがちな生活習慣の例を、表1にまとめてみました。こうした習慣は、働く世代からついてしまいがち。そしてそのツケは、数十年後、忘れたころに返ってくるのだと、厚生労働省も警鐘を鳴らしています。

表1 健康寿命を阻害する因子の例

■メタボより怖い、「サルコペニア」

自分がどれだけ運動をしているか、測ったことはありますか?

仕事で体を動かしている、日々歩き回っているという人もいるでしょう。また、朝から晩まで家事に追われて動き回っている、という主婦の方も多いと思います。逆に、オフィス勤務なので余動いていないと感じている人もいるでしょう。

日々の運動量がからだにとってどれくらい効果的か、厳密に測定するのは困難ですが、まずは1日の歩数を測ることをお勧めします。若い世代では1日10000歩、高齢者では6000歩くらいが目安と言っていいでしょう。今は便利なスマートフォンのアプリもありますので、それらを用いるもよし。まずは「現状把握」から始めてみてはいかがでしょうか。

ただし、体に何らかの疾患をお持ちの方は、必ず主治医に相談することをお忘れなく。

もっと知りたい方へ

運動量と心血管疾患の関係

■生活習慣に潜む、心血管リスクを増大させる因子

図3には、日常生活において心血管リスクとなりうる要因を挙げました。知らず知らず、心血管疾患を誘発または悪化させる「増悪因子」を抱え込んでいる人も少なくありません。ちなみにここでは、いわゆる「疾患」や「病態」ではなく、あくまで「生活習慣」に焦点を当てています。あなたは、いくつ当てはまりますか?

これらが互いに絡み合うと相乗的にリスクが増大し、さらに「心筋梗塞」や「弁膜症」、「不整脈」など心臓そのものの病気、もしくは「貧血」や「腎不全」など他の病気が関わると、より強いリスクとなっていきます。

この中に、「過活動」と並んで「不活動」という因子があります。「運動しないこと」により引き起こされる心身への悪影響は、様々。メタボリックシンドロームやロコモティブシンドロームなどは、そのうちの一部です。個々の増悪因子に関しては、今後、より深く掘り下げて取り上げる予定です。

図3 生活習慣において心血管リスクを増大させる因子

■「運動はすればするほどよい」のか?

運動が心臓血管系の予後を改善することは、世界中の研究から実証されています。それでは、運動はすればするほど健康になれるのでしょうか?それとも、やり過ぎはやはり良くないのでしょうか?実は、双方において支持するデータは数多くあり、この議論についてはまだ決着がついていません。

図4は、66万人の男女を14年間にわたって追跡調査し、1週間の活動量と死亡リスクの関係を示したものです。これによれば、1週間の身体活動が3-5回くらいであるとき、最も死亡リスクが低いと判断できます。それより少なくても、逆に多くても、リスクは増大していきます。

とはいえ、やはり、「全く運動しないこと」、つまり「不活動」の状態が最もハイリスクであることは、間違いなさそうですね。

図43) レジャーとしての中等〜高強度の身体活動の程度と死亡リスクの関係
参考文献:
  1. 厚生労働省「平成25年 国民健康・栄養調査結果の概要」より改変
  2. THE LANCET 日本特集号(2011年9月)日本:国民皆保険達成から50年「なぜ日本国民は健康なのか」より改変
  3. Arem, et al. Leisure Time Physical Activity and Mortality. A Detailed Pooled Analysis of the Dose-Response Relationship. JAMA Intern Med. online April 6, 2015. より改変