心臓リハビリテーション部門
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2021.3.1
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自粛疲れしていませんか? 自粛生活にメリハリをつけるポイント

新型コロナウイルス感染拡大の第三波対策として愛知県下にも緊急事態宣言が発令されています。感染拡大防止のために行動制限などが求められる中、長期にわたる自粛生活で心身ともに疲れている頃ではないでしょうか。今月の心リハNOWでは、基本に立ち返り自粛生活にメリハリをつけるポイントをお伝えします。

♥ 太陽の陽(朝日)をあびる

イラスト人間の身体には体内時計が備わっています1)。これは体温や血圧などの生命活動や体調を整えるなどの身体活動をコントロールしている健康管理の司令塔ともいえます。決まった時間にお腹がすく。といった現象も体内時計があるからこその現象でもあるのです。

その体内時計のつかさどるリズムには、日周リズム、週周リズム、年周リズムなど様々な種類がありますが、最も基本的な生体リズムは日周性リズムになります。通常、私たちは1日24時間で生活をしていますが、体内時計である日周性リズムはそれより少し長い時間軸で体内時計が刻まれています。ということは、数日ごとに時間軸がずれてしまうのではないか?という疑問が生じます。でも心配ありません。きちんとリセットされる瞬間があるのです。それは“朝日を浴びる”時です。朝きちんと起床し、太陽の陽を浴びて朝食を摂る(できれば起床してから1時間以内)ことで体内時計はリセットされます。

体内時計をリセットし、体のリズムやバランスを整えることで心身共に健全な1日のスタートになる。というわけです。

おうち時間が増えたことで夜更かしをし、朝遅くまで寝ていたり、家の中でダラダラ過ごすのはかえって自粛疲れに拍車をかけることになります。自宅にいる時間が長い時期だからこそ、決まった時間に起きて窓を開け、換気しながら太陽の陽を浴びる習慣をつけましょう。

♥ 十分な睡眠をとる

イラスト人間は寝ている間に体の疲れをリセットして体力を回復させ、日中に使った脳内の記憶の整理をしています。それほど睡眠は人間にとって重要です。実際に睡眠を十分にとらないでいると、疲労の蓄積だけでなく情緒不安定、集中力の低下など心身共に様々な影響が出るとされています。心血管疾患のリスクも指摘されています(図1)2)

図1

また免疫細胞も入眠中に活性化されるといわれ、しっかり睡眠をとることで免疫機能も増強されるのです。だからと言ってただダラダラと睡眠時間を延ばすのは浅い眠りが続くだけで質の良い睡眠とは言えません。では質の良い睡眠を得るためにはどうしたらいいのか?それは前述したように、朝の太陽の陽を浴びて体内時計をリセットし、規則正しい体のリズムを作ることが一番だと言われます。1日の始まりがその日の睡眠の質にかかわり、前日の睡眠の質が翌日に影響する。ということです。

♥ ゆっくりお風呂に入る

イラスト入浴は副交感神経が優位になり、体の疲れを除くだけでなくリラックス効果や癒し効果があるとされ、入浴で深部体温を上げることで免疫力が強化されます。その至適温度は一般的に40℃くらいの湯に15分ほどつかるのが良いと言われています。いわゆる“熱すぎない湯にゆっくりつかる”ことに効果があるのです。湯の温度が熱すぎたり時間も長く入りすぎるのは、かえって心臓に負担をかけることになり兼ねないので注意が必要です。逆にシャワーだけでは深部体温が上がらないので、浴室から出たときに体温が下がり湯冷めもしやすくなります。

深部体温を上げ内臓をゆっくり温めることで、自然な眠気が促され睡眠の質も向上します。今まで忙しくてシャワーだけですませていたという方も、自粛期間で時間に余裕がある時だからこそ、お風呂にゆっくりつかることを心がけてみてはいかがでしょうか。

以上、簡単ではありますが、太陽の恵みを自分から感じるように意識し、睡眠や入浴など毎日当たり前にしていることを今より少し丁寧に実践するだけで生活にメリハリが出てくるはずです。時間の有効活用で自粛疲れ知らずの身体を作りましょう。

もっと知りたい方へ

■ 運動のススメ

運動の効果に関しては今までも取り上げてきましたが、生活習慣病の予防や肥満改善、筋力の向上などの他、爽快感なども得られ、リラクゼーション効果やリフレッシュ効果もあります3)。また、運動することで心地よい眠りにつくことができ、運動しながら太陽の陽を浴びることで体内リズムも整う。そういったことからも運動はまさに自粛生活にメリハリをつける得策だといえるのではないでしょうか。

厚生労働省が毎年実施している国民健康・栄養調査4)では、運動習慣の改善の意思について、「関心はあるが改善するつもりはない」および「運動習慣に問題はないため改善する必要はない」と回答した者が過半数いることが分かりました(図2)。

図2

年齢別にみてもその動向はあまり変わらず、日常的に運動の重要性を感じている者は多いとは言えないということです。このデータは2019年のものですが、コロナ禍が明けたあかつきには運動を習慣にしている人が増えていることを期待します。

今までは寒くて外に出にくいといった理由もあったかもしれませんが、そうこう言っている間にも季節は春を迎えています。暖かくなった今だからこそ、自粛が必要な今だからこそ、散歩やウォーキング、筋トレやストレッチなどの日常でできる運動を取り入れ、健やかでメリハリある生活を目指しましょう!

参考文献:

  1. 時間栄養学 時計遺伝子と食事のリズム 女子栄養大学出版部
  2. 厚生労働省 健やかな睡眠と休養
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart-summaries/k-01
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-001.html
  3. 健康長寿ネット 健康づくりのための運動の効果
    https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-zoushin/undou-kouka.html
  4. 厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査報告
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/r1-houkoku_00002.html