心臓リハビリテーション部門
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2022.9.1
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毎日のおやつはどれくらい?間食の賢い摂り方を身に付けましょう

9月に入り、まだまだ暑い日は続いていますが、朝晩が過ごしやすくなったり、虫の鳴き声がしたりと少しずつ秋の気配も感じられるようになりました。

食事に関しても猛暑が続く時期とは異なり、気候の変動とともに食べたくなる物が変わったり、間食の内容も変わったりするものです。中には食事量や食事内容は変わらないけど、間食が増える。なんて方もみえるのではないでしょうか。

そこで今回は、普段見落としがちな間食について振り返ってみたいと思います。

♥ どこからが間食?どこまでが間食?

イラスト間食とは朝昼夕の食事以外に摂取する食べ物(飲み物)のことです。食事では足りない栄養を補ったり、好きなものを食べることで気分がリフレッシュされたり、心身共に潤いを与えてくれる効果があります。

しかし、一般的にはこの間食は“嗜好品”と分類され、食べ過ぎると肥満につながり生活習慣病を引き起こす原因にもなりかねません。そして、間食というのはお菓子やジュースを思い浮かべることが多いですが、あくまで“食事と食事の間に摂る食品”、“食事以外で+αで摂る食品”を指すので、菓子類以外でも果物やパン(菓子パン含む)のような食品を食べることも間食に含まれます。

♥ 1日に食べる間食量の目安

それでは間食は1日の中でどれくらいが許容量で、どれくらいを目安にしたらいいのでしょうか?

人によって基礎代謝量や必要栄養量の個体差があるため一概には言えませんが、一般的には1日の必要栄養量の1割程度もしくは200kcal前後1)と言われています。図1に間食のエネルギー量1)を表示してありますので参考にしてください。

図1
図1:厚生労働省 間食のエネルギー(カロリー)

当然、食べるものによってエネルギー量は違います。例えば小さな饅頭なら1個半だけど、大きいどら焼きだと半分。などと考えていると煩雑で面倒になるので、和菓子なら概ね1日1個を目安。というように簡単に考えていきましょう。食事にしても間食にしても毎日毎回同じものを食べるということはありません。難しく考えず、管理しやすい方法で食べる楽しみを作っていきましょう。

また、間食はエネルギー過剰の要因にもなり得ますが、一方で食事摂取量が低下し、食事だけでは栄養不足が懸念される際には、間食がエネルギー充足に欠かせない場合もあります。したがって、自分にとって間食が不必要な場合は1日の目安量以下、もしくは目安量まで。必要な場合は目安量以上の摂取を心がけるといいのではないでしょうか。

♥ 間食は食べる時間も重要

本来、間食である“おやつ”という言葉の由来は江戸時代にまでさかのぼります。

「八つ刻(やつどき)」に食べるものという意味であり、時間帯は14時~16時を指しています。昔の人は、活動量の多い日中の小腹がすいた八つ刻にエネルギーチャージをしていた。ということです。

人間の代謝量は、朝起きてから日中にかけて上がり、夕方から夜にかけて下がります。簡単に例えると、活動モードからお休みモードに切り替わるということです。代謝が下がれば当然、食べた物も消費から蓄積にシフトしていくということは言うまでもありません。この時に関与しているのがBMAL1(ビーマルワン)というたんぱく質。これは体内時計遺伝子のひとつであり、本来は規則正しい生活リズムを整えるたんぱく質の一つで、その役割としては体脂肪の調整の司令塔をしています。したがってビーマルワンが増加すると脂肪の蓄積を促進し、脂肪の分解を抑制するという仕組みになるわけです。

このビーマルワンは午後の14時~16時の時間帯に最も少ないとされ、逆に最も多い時間帯は夜間22時~深夜2時とされています。そして、その差は約20倍というので驚きです。このようなことからも、夜遅い時間に何かを食べると太りやすいという意味が理解できるのではないでしょうか。

八つ刻に食べるからおやつ。代謝リズムや体内時計の視点から考えても、実に理にかなっているといえます。

図1

♥ 食べたはずのおやつを忘れる?

イラスト海外でおもしろい研究報告があります。

大手ファーストフード店で、食事を終えた人に自分の食べた物が何kcalあったかを尋ね、実際に注文したものから実際の摂取量を調査してみたところ、多くの人がかなり少なめに答えていたという結果になりました2)

また、別の報告では、施設入所している若年層(15~57歳)の人に、24時間思い出し法として昨日食べた物のすべてを尋ねたところ、なんとおやつ類はかなり少なめに思い出されたという結果になりました3)。そして、これは肥満になればなるほど過小報告の傾向があったということです。

そもそも食べるという行為そのものが日常的ではあるので、普段からも私たちは食べた物の1~2割は忘れてしまうといわれます4)。ということは、間食も常習的に食べる習慣のある人は食べた物を忘れやすい可能性があります。「そんなに食べていないはずなのに太る」というのは気付かないところで何かカラクリがあるのかもしれません。

参考文献:

  1. 厚生労働省eヘルスネット 間食のエネルギー(カロリー)
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-03-013.html
  2. sasaki S, et al. Self-reported rate of eating correlates with body mass index in18-y-oid Japanese woman. Int J Obes Rate Metab Disord 2003; 27: 1405-10.
  3. Otsuka R, et al. Eating fast leads to obesity; findings based on self-administered questionnaires among middle-aged Japanese men and woman. J Epidemiol 2006; 16: 117-24
  4. 佐々木敏 栄養データはこう読む!(女子栄養大学出版部)