秋の味覚はこれ!新米の季節、米について考えよう
10月になり秋の気配を感じるようになりました。
秋といえば、食欲の秋、スポーツの秋、芸術の秋…、などといった〇〇の秋。といわれることが多いものです。それだけ秋は気候的にも過ごしやすく、何をするにも集中しやすい季節だということです。今回はその中でも特に食欲の秋に注目し、この時期に収穫される“米”についてお話しようと思います。
♥ 日本人には欠かせない米
日本人が主食とする米は、小麦やトウモロコシに並んで世界の三大主食と言われます。その中でも米は日本人に最もなじみのある主食と言っても過言ではないのしょうか。図1に示したように最近では食の欧米化による米離れや人口の減少にともなう米の消費量の低下が懸念されていますが1)、ほかほかに炊いたご飯ほど毎日食べても飽きないものはありません。
図1:農林水産省 主食用米の需要量の推移
そもそも米は大昔から日本人が食べてきた主食で、全国各地で作られている農作物の1つでもあります。
図2は日本における米の作況指数で、例年に比べて米の生産量がどれだけ推移したかを表しているものです。これをみると、地域によって生産量や出来高は違えど、日本中どこでも米は作られていることに驚きます。北は北海道と南は沖縄では気候が違うため、当然ですが育てることのできる作物は異なります。どう頑張ってもその土地でしか収穫できない作物もある中、米は日本中で作ることができるということは、いかに日本の風土に合った作物だということが分かります。
図2:農林水産省 令和3年産の全国農業地域・都道府県別作況指数
日本人にとって主食である米。その土地で作り続けられ食べ続けられているものは、その土地に暮らす人にとって良いようにちゃんと出来ているのです。
♥ 米の栄養を知ろう
それでは米の栄養について触れたいと思います。
稲から収穫された米はもみ殻に包まれており、それを除いたものが玄米です。玄米には胚芽や糠が含まれ食物繊維なども豊富ですが、通常私たちが常食しているのはさらにそこから胚芽や糠を取り除いた精白米(白米)です2)。図3はもみが白米になるまでの過程を表してありますが、もみが白米になる段階で玄米・分つき米・発芽米などができることが分かります。
図3:おコメディアgohan もみから白米へ
白米の栄養の主成分は炭水化物です。炭水化物は身体を維持していくために必要な三大栄養素で、身体を動かすために欠かせないエネルギー源のひとつです。そして体内で最も重要な臓器であり、生命維持の司令塔である脳を働かせる唯一の栄養素がこの炭水化物(糖質)です。朝ごはんを抜くと仕事の効率が悪いと言われるのはこのためで、特に主食である糖質を摂らないと脳へのエネルギーが不足したまま、見切り発車をしてしまうことなります。
白米に含まれている糖質は多糖類といって、糖の構造が複雑に絡み合っているため、砂糖類などに比べて体内での消化吸収がゆっくりです。その分、腹持ちも良いので、なるべく白米を食べることをおすすめします。
図4に白米の栄養素を簡単にまとめました。
図4:日本食品標準成分表(七訂)より作成
主食にご飯を食べて欲しい理由として、白米に含まれる亜鉛に注目しました。亜鉛は舌の表面にある“味蕾(みらい)”という味を感じる細胞をつくるはたらきをしており、欠乏すると味覚障害を起こします。そしてこの味覚障害はわりと軽度の亜鉛不足で起こるといわれています3)。亜鉛は微量栄養素といってなかなかとりづらい栄養素のひとつとされ、魚介類などに多く含まれていますが、それを解消してくれるのがなんと白米。白米には亜鉛が含まれており、含有量はさほど多くはないものの、毎日主食でしっかり食べていれば、そこそこの亜鉛を補うことができるのです。
最近はパンや麺を食べる機会が増えたために「1日全く米を食べなかった。」だとか「ここ数日ずっと米を食べていない。」などということはありませんか。こんな食生活では亜鉛不足まっしぐら。白米を見直し毎日食べる習慣を身に付けましょう。
♥ 見直そう!玄米食
図3をみてもらうと分かるように、玄米は糠がついたままなので、白米に比べて食感も悪く食べにくさを感じますが、白米に比べて食物繊維は約6倍、ビタミンB1は約5倍、カルシウムは約2倍、鉄分は約3倍も多く含まれています。また、分つき米も玄米に近いほど糠が残っているので栄養素も多く残ります。特に血糖値を気にしている方には、糖質の吸収を穏やかにしてくれる食物繊維が多いことや、GI値(血糖値の上がりやすさを示す数値)も低いのも魅力的です。
ただし、玄米は全体が糠でおおわれている分、水分の吸収に時間がかかったりと炊飯時の工夫が必要になります。最近は玄米の表面のロウ(硬くて防水性の高い層)を除いた“ロウカット玄米”といった食べやすい玄米も出回っていますが、どうしても食べにくい場合は白米に少量混ぜたり、精米の分つき割合を変えたりと無理なく食べられる方法を探すのもおすすめです。
日本の風土に合った米は、日本人に合った主食でありエネルギー源であることを忘れず、バランスのよい食事を目指すうえでも欠かさないようにしたいものです。
参考文献:
- 農林水産省 我が国における米の状況
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/attach/pdf/kome_siryou-31.pdf - おこめディアgohan お米の種類
https://gohan.life/articles/12 - 中嶋 洋子 いちばん詳しくて、わかりやすい!栄養の教科書