心臓リハビリテーション部門
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2023.3.1
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ウォーキングは手軽にできる運動療法。さあ、ウォーキングを始めよう!

3月に入ると少しずつ気温が上がり日差しも和らいできます。

この冬は特に寒波も到来したり寒くて外に出られない日もありましたが、これからの季節は少しずつ外出もしやすくなり、まさにウォーキングシーズン。寒さで凝り固まった体をほぐすためにもウォーキングは最適!

寒くても頑張って歩いていた方は継続を、中断していた方は再開を、全く歩いていなかった方はこの時期をきっかけにウォーキングを開始していきましょう。

♥ ウォーキングって?散歩とは違うの?

日常生活での歩数や散歩とは異なり、"健康のため"という目的で歩くことをウォーキングといいます1)。ウォーキングは他の運動とは違い、特別な環境がなくても誰でも手軽にできることが特徴でありメリットでもあります。

ウォーキングは有酸素運動のひとつで、生活習慣病の予防やADLの維持などが期待できますが、国民健康・栄養調査2)の結果を見ても実はそもそもの運動習慣がある人の方が少ないのが現状です。

図1に運動習慣のある者の割合を示しましましたが、“運動習慣がある”と答えた者は男女ともに全体で3割程度しかいないことが分かります。

図1
図1:厚生労働省 運動習慣のある者の割合(20歳以上、性・年齢階級別)
※「運動習慣のある者」とは、1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者。

また、図2には運動習慣改善の意思に関しての割合を示しましたが、4人に1人が“運動習慣を改善するつもりはない”と答えているのが現状です。

図2
図2:厚生労働省 運動習慣改善の意思(20歳以上、性・年齢階級別)
      問:あなたは運動習慣を改善してみようと考えていますか。

運動というとハードルが上がる気がしますが、前述したように手軽に行えるウォーキングなら“いつでも”“どこでも”そしてすぐに始めることができます。この機会にウォーキングの良さを知るのも大事!次にその効果を詳しくみていきましょう。

♥ ウォーキング効果のいろは

  • イラスト高血圧や動脈硬化、脂質異常症の改善
    ウォーキングすると血流が良くなり適度に血管が拡張するため、末梢血管抵抗が下がり血圧改善されます。当然、血管もしなやかになるため動脈硬化の予防改善にもつながります。また、適度な運動は血中の中性脂肪などを分解する酵素のリパーゼを活性化するため、脂質代謝が促進され脂質合成も抑制されます。
  • イラスト肥満や高血糖、糖尿病の改善
    ウォーキングなどの有酸素運動は、体脂肪をエネルギー源として利用するため、続ければその分の体脂肪は減少していきます。そして、ウォーキングすることで血中のブドウ糖も消費され、筋肉への糖の取り込みが促されるので、血糖コントロールにもつながります。 その他、ウォーキングをすると体脂肪だけでなく内臓脂肪も減少するので肝機能も改善します。
  • イラスト心肺機能の向上
    ウォーキングすることで適度に息が弾み、肺で十分に取り込んだ酸素を心臓で循環させるため心肺機能が向上していきます。この機能は有酸素運動を継続することで養われ、毛細血管が発達して筋繊維への血流も高まるため心肺持久力が上がります3)。そして結果的に日常の呼吸運動もスムーズに行えるようになります。
  • イラスト骨粗しょう症の予防
    骨粗しょう症予防というと、まずカルシウムを摂る。と頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。確かに食事からカルシウムをはじめとする骨形成に必要な栄養素を摂取するのは大切ですが、ただ摂ればいいかというとそうではありません。 カルシウムは運動による適度な刺激で吸収効率が高まります。また、ウォーキングの際に太陽を浴びることで、体内でカルシウムの吸収を助けるビタミンDが合成されます。
  • イラスト足腰の痛みの改善
    正しい姿勢で歩くことが必要にはなりますが、ウォーキングをすることで適度に筋力が刺激され関節の可動域が高まります。全身の筋肉のバランスが整い、運動不足も解消されるので腰痛などの改善が期待できます。
  • イラストリラックス効果
    ウォーキングのように同じ動作をテンポよく行う有酸素運動は、一定時間続けることで自律神経を整える効果があります。ウォーキングすると心も体もリラックスさせる神経伝達物質のセロトニンというホルモンが分泌されるため、ストレス発散や気持ちのリフレッシュにつながり心身とも健康維持対策になります。

♥ 正しいウォーキング方法で効果的に

せっかくウォーキングをするなら正しい方法を知って、より効果的に行いたいものです。

まず体勢についてですが、ウォーキングは日常での歩きや散歩とは異なり、姿勢を意識しながら歩くことが大切です。図3に正しいウォーキングフォーム1)を示しました。視線は正面を向き、頭は上からつり上げられているような感じで背筋を伸ばします。肘は伸ばさず軽く曲げて腕を振り、前進するときは後ろ足のつま先で地面を蹴るようにして重心を前に移動させます。

図3
図3:健康長寿ネット 正しいウォーキングフォーム

次に時間ですが、ウォーキングの最も効果的な時間帯は朝だといわれます。もちろん朝以外の時間帯でも効果は十分にありますが、朝日を浴びることでその14~16時間後にメラトニンというホルモンが分泌されます。メラトニンは睡眠ホルモンなので14~16時間後にあたる夜には質の良い睡眠が促進されるということです。

ウォーキングの目安時間は20~30分くらいといわれます。その理由としては、先ほど述べたリラックス効果のある神経伝達物質セロトニンが分泌されるのが日光を浴びてから15分くらい経過してからということ、ウォーキングで脂肪が燃焼されるのが継続して20分くらい経過してからといわれているからです。

♥ ウォーキングの注意点

ウォーキングの注意点として最も大事なことは無理をしすぎないことです。ウォーキングだけに限りませんが、早く効果を出そうとして無理をすると逆に体に負担をかけてしまうことがあります。ウォーキングは誰でも簡単にできる比較的危険性の低い有酸素運動といわれていますが、医学的に運動禁忌がないことを確認することも大事です。また、体力測定や心肺運動負荷試験で自分の適切な運動強度を知っておくのも、安全でより効果的な運動をすすめていく上での一助となります。

イラスト次に大事なことは水分補給です。当然ですが運動中は汗をかきやすくなりますが、目に見える汗だけではなく不感蒸泄といって皮膚や粘膜、呼気から蒸発している水分があります。不感蒸泄は自分では感じることがないため、特に運動前後はしっかり水分補給をすることが重要です。

その他、図4にウォーキングでの注意点をまとめてあります。ぜひ参考にしてください。

図4
図4:健康長寿ネット ウォーキングの注意点(まとめ)

ウォーキングはお金のかからない最も簡便で効果的な運動療法です。家でテレビを見ている30分、パソコンやスマートフォンをいじっている30分をウォーキングにあててみてはいかがでしょうか。思い立ったら吉日!すぐ実践する意識こそが健康管理の秘訣です。

参考文献:

  1. 公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット:ウォーキングの効果と方法
    https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/walking.html
  2. 厚生労働省 令和元年 国民健康栄養調査結果の概要
  3. 厚生労働省 eヘルスネット:心肺持久力
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-095.html