健康寿命も人まかせ?!
世界一の医療国・日本、“健康度”は世界最低水準?!
最近注目されている、“健康寿命”。健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間(厚生労働省「健康日本21」)のことを指します。WHOが2000年に初めて提唱しました。生命として生きる寿命の平均を表す“平均寿命”とは違った概念で、介護の必要なく元気に過ごせる期間です。
今、世界で一番健康寿命が長いのは、そう、言わずと知れた、日本です。
♥ 「健康寿命は世界一なのに、健康度は最下位」の不思議
ところが、日本人の生活習慣意識は世界の中でかなり低いという調査結果があります。
世界23カ国、28,000人を対象にした“健康維持のための生活習慣意識調査”1)が行われました。「十分な睡眠」、「健康的な食生活」、「定期的な運動」をそれぞれ意識しているかどうかを尋ねる調査です。それぞれ意識している人の割合は、以下のようになりました1)。
- 「十分な睡眠」・・・54%(ワースト3位)
- 「健康的な食生活」・・・29%(最下位)
- 「定期的な運動」・・・39%(最下位)
睡眠や食事や運動といった基本的な生活習慣のことを全く意識していない人が約半数、これが日本人の実情です。
別の調査では、先進国の中で日本の「主観的健康度」(自分が健康であると答えた人の割合)は、なんとダントツ最下位(OECD諸国34カ国中34位)という不名誉な結果が出ています(図1)2)。
厚生労働省は、“定期的な運動をしていない人の割合”が約半数に上るというデータを公表しています。特に、働き盛りの20-40歳代の男女において運動習慣のある者(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続している人)の割合は2割程度で、未だ8割が運動不足であると、厚生労働省も警鐘を鳴らしています3)。将来の日本がどうなってしまうか?少々心配になります。
さらに気になるのは、休養・リラクゼーションについてです。十分な睡眠とは、平均7時間程度、良質な眠りをとることですが、日本人は特に“短眠”であり、睡眠が不十分と感じている人は20−40歳代の3割にのぼります3)。
♥ 健康を、人まかせにしていませんか?「健康ではない状態」が長い日本人
日本人は国民皆保険制度に甘えて自らは健康管理を怠り、「世界一医療に依存している国民」なのではないか、と厳しい指摘をする専門家もいます。こうした中、図2のように、日本人の平均寿命と平均健康寿命の差は男性9年、女性12年と、長期にわたります。かなり長い年月を“健康ではない状態”つまり介護や何らかの支援を必要とする状態で過ごす日本人がそれだけたくさんいる、ということです。
「健康管理は何もしていない」という人が、実に46%もいるという事実。これからは、医療制度をあてにするばかりではなく、自分自身ができることはしなければなりません。
♥ 疲労のリセットと次の活動への備え
健康管理といっても、いろいろな考え方があります。先の調査で筆者が気になった項目は、“適度な休養”についてです。心身ともに健康であるためには、定期的に疲れをリセットし、翌日の充実のために程よくからだを活性化させることが大切です。しかし、日本人はこの“リセット”と“活性化”のバランスを保つのがうまくありません。それは、日本人の余暇の使い方、いわゆる“あそび”がうまくないことに関連するとも考えられます。
次項では、“リセット”と“活性化”に必要なキーワードのひとつ、“あそび”について、考えてみたいと思います。
もっと知りたい方へ
健康のために、本気で“あそぶ”
皆さんは、“ちゃんと”あそんでいますか?
今回は、あそぶことと健康について考えてみたいと思います。
■ “あそぶ”とは、本来の自分をとりもどすこと
古語辞典で調べると、“あそぶ”の語源としては次のような説明が出てきます。
- もともとは、“神様が自由に動く”、“神事の際の芸能”
- “ある楽しみごとに専心して時を過ごす”
- “水中で自由にふるまう”“そぞろ歩きをする”
- “ひまに暮らす”
(新版・古語辞典〈角川 書店〉)
もとは神聖な意味を持つ“あそび”。あそびは本来の自分に還り、純粋に自身を楽しむことです。怠けることではありません。現代の私たちにとってあそびは、“充足する”、“充足するための準備をする”ための時と捉えることもできます。リラックスして活動しているとき、自律神経(交感神経と副交感神経)のバランスは非常によくなります。つまり、あそびの時にこそ人はリラックスし、真の意味で心身ともに自分自身を取り戻し、明日への活動に備えることができるのです。
ある人にとってのあそびが他の人にとっても同じ、ではないはずです。たとえば ジョギングやランニングは、ある人にとってはストレスになり(交感神経優位)、またあるひとにとっては無心に戻る瞬間(副交感神経優位)となります。自分にとって真の“あそび”とはなにかを知っている人こそが、明日の活力を得る素質があると言えるかもしれません。
■ しっかりとリラクゼーションの時間をとる
睡眠の重要性については、本コラムでも以前ご紹介しました(2017年11月、睡眠)。
よい睡眠のためには、ベッドに入る際の寝読書、寝スマホ、寝テレビは避けること。入浴直後や飲酒直後の就寝もよくありません。また、小刻みにリラックスできる時間と方法を見出しておくとよいでしょう。
社会で活躍する人の多くは、睡眠時間を削ることをせず、またどんなに忙しくても、1日のうち15分でも1人になる時間、本来の自分に戻れる時間を取るともいわれます。真の意味での“あそび”の時間を大切にしているのです。
■ “あそぶ”ための、からだをつくる
よくあそぶための資本、それはいうまでもなく自身のからだです。 まずは、よい栄養の摂り方を心がけること。そして、日々適度にからだを動かすことです。この場合、強い負荷は不要、まして義務感や強迫観念にかられて・・・などは逆効果です。運動に慣れていないひとは、まず日々の生活動作を変えることから始めてみてはいかがでしょうか?
- 背すじを伸ばす(頭上から吊り下げられているイメージ)
- パソコンに向かうときは猫背にならない
- 通勤車中では空席があっても座らない
- ごろ寝でテレビは見ない
- 食事は一口ずつよく噛む
適切な健康管理がよいあそびをつくり、よいあそびが健康なからだをつくる。こうした好循環が、個人にとって日々の活力に繋がり、ひいては日本国民の幸福にも繋がるのではないでしょうか。
■ 好きなことをする
「はたらいて、笑おう。」のコピーとともに高齢の女性の笑顔がはじけるポスターを、一時期街中や電車の中でよく見かけました。人材派遣などを手掛けるパーソルという企業グループのポスター(https://www.persol-group.co.jp/special/iconicworkers/cd/index.html) です4)。
そのポスターにあった美しい女性の名はカルメン・デロリフィチェさんといって、なんと、86歳の現役カリスマスーパーモデルです。若い頃と変わらず美しい姿で活躍する彼女にとって、“現役のモデルである”ことが好きなことであり、“あそび”の1つなのではないでしょうか。
最後に、カルメンの言葉を引用しましょう。ぜひ、日々の参考に・・・
その源は"情熱"よ
義務なんかじゃなく本当にしたいことだから
私は学んだの
"自分の世界は変えられる"と
人生は自由に再構築できるのよ
今でもやり続けているわ
私に終わりはないの
はたらいて、笑おう。
参考文献:
- Survey among more than 28,000 consumers in 23 countries – Which of these activities do you do regularly to maintain your physical health? (http://www.prnewswire.co.uk/news-releases/sleep-beats-healthy-eating-and-exercise-in-peoples-health-routines-287485031.html)
- OECD「図表でみる医療2013」
- 厚生労働省「平成26年度国民健康・栄養調査結果の概要」
- https://www.persol-group.co.jp/brand/index.html