③心臓手術と対象疾患〜冠動脈疾患・冠動脈バイパス術
心臓自身を栄養する“冠動脈”が詰まったり(閉塞)細くなったり(狭窄)することで起こり、心筋梗塞や狭心症があります。動脈硬化が原因で発症することがほとんどですが、川崎病や冠動脈瘻が原因になることもあります。
冠動脈疾患に対する手術は、冠動脈バイパス術と呼ばれます。
詰まっている・もしくは狭くなっている冠動脈の更に先に、新しい血管(グラフト)を縫いつけます。新しい血液の通り道をつくるため、冠動脈“バイパス”術と呼ばれるわけですね。グラフトには、胸の内側にある内胸動脈や、足にある大伏在静脈が多く使用されます。胃にある胃大網動脈や手の橈骨動脈を使用する場合もあります。
手術中には人工心肺と呼ばれる機械を用い、心臓を一時的に止めて手術を行いますが、冠動脈バイパス術に関しては、人工心肺を使わないで手術することが可能です。この術式は、オフポンプ冠動脈バイパス術と呼ばれており、天皇陛下が受けられたのが記憶に新しいところです。当院では、単独の冠動脈バイパス術に関しては開院からすべてオフポンプを第一選択とし、98.9%で完遂しています。
現在の人工心肺は非常に安全になっており過度に怖がる必要は無いですが、人工心肺を用いないことにより、人工心肺に伴う体の負担・合併症を更に減らすことができると考えています。また、肺の機能が悪い患者様や、頭の血管に病気があり脳梗塞の危険が高い患者様などに、より安全にバイパス術を施行できると考えています。