心臓へのアプローチ・MICSについて
心臓は胸の真ん中やや左よりに位置しています。前は胸骨、後ろは背骨(胸椎)、横は肋骨に囲まれています。心臓を手術するためには心臓を囲んでいる“骨”を何とかしないと、心臓に到達できません。
もっともスタンダードな方法は、胸骨を縦にまっすぐ切る“胸骨正中切開”法です。昔から行われている方法で、胸骨にくっついている鎖骨や肋骨は一本も切れません。視野が良く、どんな症例にも対応できる優れた方法です。手術が終わったら、縦に切った胸骨をワイヤーなどでしっかりと固定します。
胸の真ん中を切るため、どうしても手術跡が目立ちやすいのと、胸骨がしっかりくっつくのに時間を要す(2-3ヶ月程度)ことが欠点です。このため、少しでも胸の真ん中の傷を小さくしようとして開発されたのが“胸骨部分切開”法です。
胸骨部分切開は、その名の通り、胸骨の下半分(もしくは上半分)を切って手術を行う方法です。胸の真ん中の傷は小さくなりますが、手術中の視野も狭くなりますので、疾患によっては不適当な場合があります。
また、皮膚のみを小さく切って胸骨は通常通り縦に切る方法(“正中皮膚MICS”と呼んでいます)もあります。
これらの方法は、真ん中の傷は小さくなります。が、無いわけではありません。そこで、肋骨の間から行う“ポートアクセス(Port Access)法”が登場したわけです。
これは、右胸(疾患によっては左胸)に指の長さ程度の切開を加え、肋骨の間から手術をする方法です。人工心肺の管を通すために鼠径部(足の付け根)を3-4cm切る必要がありますが、胸の真ん中には傷はまったくできません。美容上とても優れているだけではなく、胸骨を切らないため早期社会復帰も可能となります。
また、2018年からは3D内視鏡を用いた内視鏡MICSを開始しています。深部の視野が良好になるため、僧帽弁形成術に最も威力を発揮します。現在は僧帽弁のみならず、大動脈弁・三尖弁、心房中隔欠損や心室中隔欠損、左心耳閉鎖やメイズ手術など、さまざまな手術が内視鏡で可能となっています。傷も3-4㎝程度で美容的にも優れており、患者様から大変好評を得ております。
ポートアクセス法が可能な疾患・症例は1例ごとに異なりますので、ご相談ください。