⑧成人先天性疾患など特殊な病態について
前任の外科部長・米田正始先生のおかげで、通常の市中病院ではめったにお目にかからない症例も数多く手がけてきました。
ひとつは“アダルト・コンジェニタル(Adult congenital)”と呼ばれる疾患群です。
先天的に心臓が悪く、小児期に手術を行った方や、子供のころは手術が必要なかったけれども、年齢とともに悪化して成人後に手術が必要になるかたなどです。例を挙げると、修正大血管転位、左室緻密化障害、エブスタイン奇形、右室二腔症、バルサルバ洞瘤破裂、三心房心、フォンタン手術後などです。もちろん、心室中隔欠損症や心房中隔欠損症、肺動脈管開存症などもあります。
当院では、当院では、小児心臓血管外科の先生とも連携をとりつつ、成人の先天性心疾患を手がけてきており、現在では120例を超えております。
小児の心臓血管外科も進歩が著しく、かつては救命不可能であった症例も助けることが可能になっています。それに伴い、小児期に手術を受けた成人の患者数が増加しています。小児心臓手術の知識と、成人心臓手術の技術を併せ持った“成人先天性心臓外科=Adult Congenital Surgery”は、今後、日本の心臓血管外科領域のなかで確立されるべき分野の一つであろうと考えています。当院では、それらを先駆け牽引できるよう、Adult Congenitalにも力を入れています。
また、“エホバの証人”を信仰している方々の手術も約50例手がけており、全員お元気に退院されております。
マルファン症候群の患者様は先天的に結合組織が弱いため、大動脈が裂けたり瘤化しやすいです。また、大動脈弁や僧帽弁が傷んでしまうこともあります。
当院では、マルファン症候群に対する大動脈手術のみならず、大動脈弁手術、僧帽弁手術も行っています。また、術後のケアも非常に大切ですので、患者様のかかりつけ医と連携を保ちながら、定期的なフォローを継続しています。